パン屋?の、 
野良屋つねきち

投稿者:(Let’s野良屋の)野良屋  投稿日:2002年 7月7日(日)  取材日:7月5日(金)



 この店を知ったのは、オレがHPを立ち上げて、検索で自分のHPを探した時の事。
≪野良屋≫で検索を掛けたら、他にも≪野良屋≫が有る事を知ったのだ。
長野県の自然食パン屋らしい。
それは誰かが書いた店のレポの一部らしく、その店のHPでは無かった。

 月日は流れ、いつか行こうと思っていたこの店の調査依頼を受けたのをキッカケに、思い立ったが吉日で、同じ≪野良屋≫の屋号を持つこの店の取材と成りました。

 場所は長野県上伊那郡高遠町、遠い...、ほとんど山梨県ぢゃん!
この日の為に会社をサボって十日町から長野県に入り、高速道路をひた走り、更に峠道を一山越して片道240km、この近くかと思い、近くの交番で聞いたらスグソコとの事。










このカンバンを見た時、
思わず
目頭を熱くしてしまいました!
 まるでオレが書いた様なカンバン♪
いや、オレ如きではこんなにも安堵感溢れる看板は描けない、、、期待で胸が膨らみます。
R152沿いに立てられ、この微妙な傾きの図は、この先が下り坂だと示しています。(^^;
TELで確認を取って来たものの、営業中の文字を見てホッと一安心しました。

 この看板の先には谷に降りる細い急な道が有り、下の方にそれらしき家を確認しました。
NETで見て1年間、念願の同じ屋号の野良屋に御挨拶が出来るとは光栄でアリマス。










・・・って、
マジで野良ぢゃん!!
 山から松の香りがする風の谷に、ポツンとそれは有りました。
細い小道の横には表札?が有り、庭先(注:野良)では奥様が畑(注:野良)仕事をしていました。

  「新潟から来てくれた方ですか、どうぞ入ってください。」










さて、入店?しましょうかネ
 新潟の田舎モンのオレが言うのもナンだが、玄関先から既に野良なのです。
この風景に溶け込んだ家は、想像していた様な店舗では無く、正に野良家
庭(注:野良)には目印のティピーが有り、野菜も雑草も仲良く畑(注:野良)で暮らしているし。(^^;
この家と、この景色は国宝級なのダ!オソルベシ長野県!










ゲストルームにて
 奥から旦那(野良屋)様が出て来てくれました。
ココに来た経緯を話します。NETで知った事を伝えると、全く関知してない御様子。

 オレも野良屋を名乗る1人で、ココをHPに載せたい意志を伝えると、快く承諾してくれました♪
 「こんな事を言われたのは初めてかな?」
・・・って事は、完成すれば公式サイトぢゃん!

 正式名称≪野良屋つねきち≫
埼玉県からこの地に移住し、パンを焼く前は無農薬野菜の販売等をコツコツと営んできた。
野良と野良仕事が好きで、≪パン屋の野良屋≫ではなく、「野良屋がパンを焼いてる」が正解らしい。また、≪つねきち≫とは、以前飼っていた野良猫の名前だった事が判明。

 買い求めたクルミ入りパンを食べながら話を聞きました。
  『コレが野良パンの味なのか?!?!』
水分が少なく、シッカリと焼き締められたクルミパンは、素朴で芳醇な香りと共に、噛めば噛む程に風味と甘味が増し、パンの知識のカケラも無いオレでも、市販されてるパンとは異種な事に気が付く。酒臭い様なパンとは違い、正に自然の恵みと言うべき香りと味が凝縮されている。

 聞くと、純粋に石ガマだけで焼いているパン屋は少ないそうな。
パンだけで生計を建てるには手間と費用が掛かり過ぎ、まして怪しい添加物を加えないとなれば尚更の事。だからパン屋ではなく、野良屋が本業でパンも焼いてるだけなのだ。

 「毎日パンを焼いているわけでもないし、週末の木金には焼くつもりにしているのですが...他に用があったらパン焼き日を前後にずらす。 これと言って宣伝もしてないから、口コミだけでしか知ってる人は居ないらしい。 それでも欲しいって言ってくれる人が居てくれる。仮に100人訪れても、1人だけでもこの味が気に入ってくれればいいんだ。大体そんなに対応し切れないしね。」

 商売っ気などは感じられない。心底好きでパンを焼いている様だ。
または野良仕事を続ける為にも、必要最低限の報酬をパンに託しているのかも知れない。










神が宿る石ガマ
 奥のパン工房に通してもらうと薪を燃やした香りがし、火の荒神(コウジン)様が祭ってある手作りの石ガマを見せてもらいました。
中で薪を焚き、十分に石ガマを温めた後に、その余熱だけでパンを焼き上げるそうな。
今日はパンを焼いていないが、昨日の熱がまだ残っていて温かい。自然からの恵みが詰まった生地を、この石ガマから新たな命を吹き込んでパンへと変身させて行く。










粉挽きマシーン
 どう見てもファクトリー品ではない。外国製らしいが、まるで親しい友人の為にワンオフで手作りされた様な温かみを感じる。中には石臼が入っていて、電動式の石臼なのだ。
手前のノブを回して、御丁寧にも挽き目を調製できるらしい。
いったいどんな音がするんだろう?
今回は聞けなかったが、例え石臼の音でも、心を落ち着かせてくれる優しい音に違いない。










ナチュラルなんです
 「人はコダワってると言うが、特別な事をしている訳ではない。自分でしたい様にしているだけだし、身近な素材で安心して食べられる野良屋流のパンを作りたい。」

 「安定した品質を安定して供給する方が、よほどコダワリだろう? 自分のパンはせっかく買いに来てもらっても無い時の方が多いし、味もその時々に応じて微妙に違う。生き物を相手にしてるから、それが自然なんだ。 だから選んでくれた人だけしか買いに来ないんだ。」(笑)

 「だいたい厳選された外国の麦を使った自然派の本物のパンとか有るが、ジェット燃料を撒き散らして、旨いと言う理由だけで使用されて、更に原子力電気で焼かれたパンが自然に優しいと言えるか?」

 「また大手のパン会社などの様に、安定品質でパンを作る為に多くの食品添加物を加えて、小麦に無理強いさせながらパンを作ってる。小麦本来の風味も持ち味も殺され、パンみたいな食品を消費者に売っているし、消費者も何の疑いも無く買い求めている。
せめて子供達だけにでも、より自然に近いパンを食べさせてあげたいね。」

 「ここでは目の前の畑で育てた各種の麦を使い、育て増やした種(酵母)に仕事をさせて、麦の歌を聴きながら、おもむくままにパンを焼いている。畑の麦の量は限りが有るし、仕入れて来た麦に自家製麦を混ぜて使ってる。世界中を探しても、今ここでしか味わえないパンもあるんだ。」


 これを聴いて激しく共感♪
一般人に趣旨を解からせる為には、ここまで絶対値的な表現も必要なんです。
オレもワザとこんな表現をしたりもする。金を掛けてオゾン層を破壊しながら、異国の地で異国の水と空気を練り混まれたパンは、もう“自然”とは上辺だけが焼き付けられたパンの事なのだ、とか。


 「種にエサをあげて...」みたいな言葉が何回か聞かれた。
大切に育てている酵母君は、ニンジンやリンゴがとても好物らしい。
共に生き、共にパンを作りあげる。いや、共にパンを産み出す、の方が近いのかも知れない。

 コダワリでは無い、これが野良屋つねきち流のパン哲学なんです。
そして、媚びず奢らず流されず、風の吹くままに自分で出来る限りの自然との対話を楽しむ。
これこそが野良屋流なんです。(キッパリ)










野良麦の生えるがままに
 「ここに居ない時には野良にいるから、そこの太鼓でも叩いて呼んでください。」
ナント!太鼓か狼煙(のろし)が、ここを訪れた人の唯一の連絡手段だったとは!(爆)

 庭先(注:野良)に出て見ると、小さな子供用の田んぼに稲が植えて有り、野菜畑(注:野良)には所々に麦がポツンと生えている。植えた訳ではなく、昨年の落穂が発芽して成り行きに任せて育っているらしい。
芸術品の様に薊(アザミ)が青々と茂り、作物だか雑草だかの区別のないままに畑(注:野良)は息づき、まったりとした土の香りに包まれている。

 「その内にその麦も収穫するからね」
あ、やっぱり。(^^;
意図したオブジェかと思っていました。(笑)










めぐり逢いとは?
 パンの味も分からないオレは、ここのパンを取材に来たのではナイ!
≪野良屋つねきち≫様に興味が有ってここまで来たのだ。
高遠の自然と共に暮らす野良屋、ナチュラリストではなく、正に野良屋であった。

 例え遠くても年に一度は訪れたい。まるで親戚にでもめぐり逢えた気もするし。
パンの味だけではない、≪野良屋つねきち≫の味はココに来なければ解からないのだ。

 多分、煙突からは薪の煙が辺りに立ち込め、パンを焼いている時には、この風の谷は香ばしい野良パンの香りで包まれるであろう。



      ≪野良屋つねきち≫
    
       注:御問い合わせは、狼煙か伝書鳩が間違いないと思います。(キッパリ)
         TELしても、たぶん野良に出てますので♪


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